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「ない仕事」の作り方/みうらじゅん

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今回はこちらの本をご紹介します。

タイトル「ない仕事」の作り方
著者みうらじゅん
出版社文藝春秋
初版発行日2015/11/25
備考紙の本で読了
野々蘭

自分の好きなものの魅力を誰かに伝えたくなる!

どんな本?

みうらじゅんさん、と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?

センター分けの長髪にサングラスという印象的なビジュアル。
「マイブーム」「ゆるキャラ」などの流行語の生みの親。
あるときは仏像を語り、またあるときはエロを語り……。

で、この人の本業って一体何なんだ?と思ったことがある方もいるのではないでしょうか。

みうらさんの公式サイトでは、「イラストレーターなど」という肩書きになっていますが、Wikipediaを見ると、本当に幅広い分野でいろいろなお仕事をされていることが分かります(ご本人いわく、もはや「など」の部分の割合の方が多くなっていると)。

このように、みうらさんを特定の肩書きに当てはめづらいのは、単に活動の幅が広いとか、キャラが濃いという理由だけではないと思います。

それはみうらさんが、本書のテーマでもある「ない仕事」をつくってきた人だから。

本書のまえがきで、みうらさんはこのように自己紹介をしています。

私の仕事をざっくり説明すると、ジャンルとして成立していないものや大きな分類はあるけれどまだ区分けされていないものに目をつけて、ひとひねりして新しい名前をつけて、いろいろ仕掛けて、世の中に届けることです。

p.3

大事なのは、あくまで自分が本当に好きになったものの面白さを、みんなに知ってもらおうと「仕掛けて」いくことだそう(なんでも流行らそうとしているわけではないのです)。

そしてみうらさんはこの戦略を「一人電通」と呼び、数々の”マイブーム”を世に広げてきました。

野々蘭

「地方の着ぐるみ」ではあまり注目されなかったものが、「ゆるキャラ」として全国的なブームに…これも、「(もともとは)ない仕事」を作った実例です!

本書はみうらさんが過去に「仕掛けて」きたさまざまな”マイブーム”を例に、アイディアのひらめき方や、世の中へ広めていく方法など、「ない仕事」をつくるコツを語った本です。

独特なMJ(みうらじゅん)ワールドを楽しみながら、クリエイティブな刺激をたっぷり浴びてください!

全体の感想

ざっくり感想

本書はがっつりビジネス書というよりも、みうらさんが今まで仕掛けてきたブームや企画について、振り返りながら語るエッセイに近いです。

というか、「ない仕事」のコツなんだから、一般的な既存の仕事をベースに書いたビジネス書じゃないのは当たり前なんですよね(笑)

なので仕事論だと思って身構えるのではなく、偏愛対象に熱中し、それを世に広めていくみうらさんの美学を楽しむ本だと思って読んでみてほしいです。

とくにオススメなのが、クリエイティブな活動をしていたり、好きなものについて発信している、またはそういったことを仕事にしたいと考えている方。
こういった方にはきっと刺さる本だと思います。

  • 好奇心が湧いてくる
  • 趣味や好きなものをとことん追求したくなる
  • 好きなものの良さを人に伝えたくなる
  • 昔から好きだったことに、仕事や創作のヒントがあるかも?と思える
  • 目の前にある仕事や生き方がすべてじゃない、と肩の力が抜ける(?)

本書を読んだあとの私の感情をざっとまとめると、こんな感じ。
具体的なノウハウがどうというより、創作活動やあらゆるライフワークに対するエネルギーが湧いてくる本と言えるかもしれません。

野々蘭

思わず「今のマイブームってなんだろう?」、「昔は何にハマってたっけ?」と考えてみたくなります!

また、考えようによっては、いわゆる同人活動も、みうらさんの言う「ない仕事」に近い活動じゃないでしょうか。

コミティアなどに行くと、自分の想像のはるか斜め上をいくテーマで本を書いている人や、ひとつのものへの愛情をこれでもかと作品に詰め込んでいる人がたくさんいます。

もちろん、多くの方はお茶の間に流行らせたくてやっているわけではないと思いますが、「刺さる人に届け!」というモチベーションは持っているはずです。

そういう意味で、同人活動をやっている方が読むと、より共感できたり楽しめたりする本なんじゃないかなと思っています。

まずは「ネーミング」からはじめよう

読んでいて目を惹くのは、なんといってもみうらさんの独特なネーミングの数々です。

実際に流行らせたり仕事にした企画についてはもちろんですが、ところどころに出てくる自分の感情や状態なども「私はこれを〇〇〇と呼んでいるのですが」と、いちいち名称がついています。
基本はダジャレっぽい感じですね(「後ろメタファー」とかw)。

まえがきの説明にも出てきましたが、それくらい「名前をつける」という行為は、みうらさんにとって重要なんだと感じます。

野々蘭

以前ご紹介した『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』でも、愛称を与えて、愛着や親近感を持たせるという話をしていますね。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。/川上和人  今回はこちらの本をご紹介します。 (function(b,c,f,g,a,d,e){b.MoshimoAffiliateObje...

面白い事例はいくらでもありますが、とくに印象にのこったのは、『地獄表』というネーミングについての話です。

あるとき、バスに乗ってマイブームだった「即身仏」を見に行ったみうらさんですが、誤って途中下車してしまいました。

しかも、時刻表を見るとスッカスカで、その路線は一日に数本しかバスが来ないようです。

あまりの少なさに憤りを感じながら時刻表の写真を撮っていると、ふと、このような地獄みたいな時刻表を、『地獄表』と呼んだら見方が変わるのでは?と思い付きました。

それ以降、田舎町に行くとわざわざ『地獄表』を探して写真を撮るようになり、むしろバスの本数があると、物足りなさすら感じるようになったそうです(笑)

マイナスのものを、名前をつけて面白がってみると、自分の気持ちすら変わってプラスになる。

p.48

クリエイティブ脳を鍛えるため、というのはもちろんのこと、ちょっとネガティブな感情やマイナスの出来事に対しても、面白おかしく名前をつけてみる。

ものごとの見方を変え、日常をポジティブにするヒントとして、取り入れてみてはいかがでしょうか。

ぐっときた言葉

最後に、本書の中から個人的にぐっときた言葉を3つ選んでみました。

なぜひとつのことに特化しなかったのか?その理由は、やりたいことによって、漫画にするのか、イラストにするのか、エッセイにするのか、歌にするのか、イベントにするのか、テレビ番組にするのか、それぞれに「相応しいツール」を選んできたからにすぎません。

p.129

冒頭でお話した、特定の肩書きを当てはめづらい要因のひとつだと思うのですが、この感覚、とてもわかります。

私自身、漫画を描いたり、ブログで文章を書いてみたり、本やグッズをつくってみたり、いろんなことに手を出しています(みうらさんほど幅も規模もないですが…)。

それは「どれも楽しそうだから」という理由もありますが、やりたいことによって、表現方法を選んでいるという側面もあるのです。

とはいえ、「なにをやってる人なのかよくわからない自分」に、ずっとコンプレックスじみたものも感じていました。
そんなときこの言葉を見て、もっと堂々と「なにをやってる人なのかよくわからない自分」でいても良いのかなと、少しの自信と勇気をもらいました(笑)

こんな仕事をしているので、私自身がさぞ自己主張が強いと思われがちですが、実はそうではありません。私が何かをやるときの主語は、あくまで「私が」ではありません。「海女が」とか「仏像が」という観点から始めるのです。

p.131

よく「自分探し」という言葉を耳にしますが、みうらさんが推奨しているのは「自分なくし」。

みうらさんの好きな仏教的な考え方も反映されていますが、仕事論としても、「なるほど…」と考えさせられました。

人生どうなるかなんてわかりませんが、ひとつはっきりしていることは、他人と同じことをしていては駄目だということです。なぜかというと、つまらないからです。皆と同じ人気職種を目指し、同じ地位を目指すのは、競争率も高いし、しんどいじゃないですか。
それよりも、人がやってないことを見つけて達成するほうが、楽しいじゃありませんか。

p.173

あとがきの言葉です。

前半は「もっと尖っていこうぜ!」みたいな強気なメッセージかと思いましたが、

『無理して周りと同じ目標を目指すのはしんどいし、自分は「ない仕事」をつくりながら楽しく生きていく(この生き方が合っている)』

という話だと解釈しました(あくまで私の解釈です)。

視野が狭くなっていたり、「〇〇でないといけない」という思い込みに苦しんでいるときに、「そうか、世の中にはいろんな生き方の選択肢があるんだな」と思えるだけでも、少し気が楽になるんじゃないでしょうか。

全員が全員「ない仕事」をつくって食べていくべきだとは思いませんが、私自身はなんだか、少し前向きな気持ちになれました。

野々蘭

笑いとパッションのなかに、考えさせられる言葉や仏教哲学が出てくる。そんなところも本書の魅力かなと思っています!

まとめ

私なんぞがこんなことを言うのは恐れ多いですが、読んでいてときどき、他人とは思えないと感じる部分がありました(笑)

スクラップ帳にコメントを書きこんだり、架空の漫画雑誌をつくったり、ひとりで自問自答する会議の結果、とんちんかんな結論でもツッコミ不在のまま猛進していったり……。

一人っ子であるという共通点がひとつの要因な気がしますが、ところどころ「わかる~!」と共感しながら読んでいました(笑)

それはさておき。
先述のとおり、本書はクリエイターさんや好きなことを発信している方には、とても刺激になる本だと思っています。

好きなものやグッときたものをとことん追求し、あとはとにかくアウトプットし続けること。

こう言葉にするとシンプルですが、とことんやりきったり、継続することは簡単なことではありません。

自分がやりたいことが分からなくなったり、モチベーションが下がったときに、定期的に読み返してパワーをもらいたい本です。

▲よく拝見している山田五郎さんのチャンネルに、みうらじゅんさんがゲスト出演した回。仏像にはくわしくないのですが、楽しそうに語り合うお二人を見ていると、自分も楽しくなってきます(第2弾もあるのでぜひ!)。

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野々蘭

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